「16歳」と「10年後」―
時を経て紡がれる『再生』の物語。

16歳。僕たちは隣にいる誰かを守れると信じていた。
あの日、記憶を失った幼馴染の姿を見るまでは ―
過去の記憶に縛られた青年と、全てを忘れてしまった幼馴染が、2人だけの「嘘」と共に10年ぶりの故郷へ帰る。



中学三年生の冬に両親が他界し、地元の大地主に養子として引き取られた雪那(ゆきな)は、高校生活が始まると同時に学校を休みがちになる。 雪那の異変に気付いた幼馴染の同級生・馨(かおる)は、雪那を取り巻く現実を知り自分の無力さに苛まれていた。

16歳の夏。 田舎町を少し外れた夕暮れの道路で、雪那は交通事故に遭ってしまう。彼女が目を覚ましたと聞き病院に駆けつけた馨が目にしたのは、記憶を失った幼馴染の姿。 他愛ない会話が弾む休み時間。いつもと同じメンバーで過ごす放課後。当たり前に続くはずだった時間が二人に訪れることはなかった。

10年の歳月が経った冬の東京。 喪失感と後悔を胸に秘めたまま、一人暮らしていた馨は、偶然雪那と再会する。

「私と一緒に、嘘をついてくれませんか?」 全てを抱えたまま生きてきた青年が、全てを忘れてしまった幼馴染と再び故郷へ帰る。 ひとつの嘘と共に ー